》あてに、新しい男を見つけ出して面白く遊んでみようかとも思った。
「又ちゃん。なに……」
又蔵によび出されて、お花は楽屋口へ起《た》って行った。二人は何かしばらくささやき合っていたが、やがてお花はにこにこ[#「にこにこ」に傍点]しながら戻って来た。その時にはお絹はもう舞台に出ていた。
「お花さん。鮓《やすけ》の相手は知れたかね」と、楽屋番の豊吉が食いあらした鮓の皿を片付けながら訊いた。
お花は黙ってうなずいた。
「当ててみようか。浅草の五二屋《ごにや》さん。どうだい、お手の筋だろう」
「楽屋番さんにして置くのは惜しいね」
「売卜者《うらないしゃ》になっても見料《けんりょう》五十文は確かに取れる」と、豊吉はいつもの癖でそり返って笑った。
「浅草の大将、だんだんに欺《だま》を出して来るね。又公が今来てお前に耳打ちをしていた秘密の段々、これも真正面から図星を指してみようか。お花さんにまず幾らか握らせて、向島あたりへ姐さんをおびき出して、ちょうど浅草寺《せんそうじ》の入相《いりあい》がぼうん[#「ぼうん」に傍点]、向う河岸で紙砧《かみぎぬた》の音、裏田圃で秋の蛙《かわず》、この合方《あいか
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