く昏睡に陥ったので、お君はそっと寄って上から衾《よぎ》をきせてやった。縁の下では昼でもこおろぎが鳴いていた。
日が暮れると、豊吉をさきに立てて、お若やお花やお辰がぞろぞろと見舞いに来た。お花とお辰はさきへ帰った。豊吉とお若はあとに残って、お君と三人で薄暗い行燈のもとに黙って坐っていた。
さっきから幾たびも風鈴そば屋の声を聞くので、この頃の夜もだんだんに長くなったのが思われた。綿入れの節句もあしたに迫って、その夜寒《よさむ》をよび出すような雁《がん》の声が御船蔵《おふなぐら》の屋根のあたりで遠くきこえた。
「さびしいね」と、お若は襟をかき合わせた。
「さびしいなあ」と、豊吉も腕を組んだ。
大川の水の音もここまで聞えるほどに静かな夜であった。お絹は急に夢から醒めたようにもがいて、再び蛇ののたくるように蒲団の上を這いまわった。彼女は林之助の名を二度呼びつづけた。三度目にお里の名を呼んだ。
十五
豊吉が向柳原の屋敷へあわただしく駈け付けたのは、その夜の五つ半(午後九時)ごろであった。
「お絹さんはとうとういけませんでした」
「ふむ。いつ頃……」と、林之助もさすがに顔色を変
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