様がない」
 お絹は崩れるように蒲団の上に俯伏すと、お君は声を立てて泣き出した。
「姐さん。後生《ごしょう》ですから死なずにくださいよ。姐さんが死ねば……あたしも死んでしまいます」と、お君は又しゃくり上げた。
「そりゃああたしだって死にたかあないけど……。あたし、ほんとうに死に切れないけど……。いいかい。今のことはお前に頼んだよ。あたしの着物でも簪《かんざし》でもみんなお前にあげるから。なに、お葬《とむら》いぐらいは小屋の方でどうにかして呉れるだろうよ。だがね、この蛇は人にうっかり渡しちゃいけないよ。これだけ飼い馴らしてあれば売ってもいい値になる代物《しろもの》だし、また何かの役にも立つかも知れないから。誰がなんと言っても渡しちゃいけないよ」
「はい」と、お君は泣きながらうなずいた。
 きょうは風のぐあいか、東両国の観世物小屋の囃子《はやし》の音が手に取るように聞えた。お絹はさっきから自分でも不思議だと思うくらいに気分もはっきりして、舌も自由に働いたのであるが、言うだけのことを言ってしまうと、急にがっかりと気がゆるんで、目がくらみそうに頭がほてって来た。彼女は俯伏したままでまた正体もな
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