方があるんだからね。大人だって怖いことはないよ。あたしの魂も蛇に乗りうつって、きっとお前の加勢をしてあげるからね。いいかい」
もし林之助に見せたら気絶するかも知れないと思われるほどに、お絹のくぼんだ眼はいよいよ物すごく光った。糸のように痩せ細った顔と、この物すごい眼をじっと見つめていると、お絹が蛇か、蛇がお絹か、お君にも判らないほどに怖ろしかった。お絹は枕もとへ蛇の箱を持って来いと言った。
「君ちゃん。神棚の御神酒《おみき》と、それからお米を持って来ておくれ」
箱はお絹の枕もとに運び出された。彼女はお君にかかえられて蒲団の上に起き直って、自分の尖った膝の上にその箱をのせて貰った。いつものように箱をとんとん[#「とんとん」に傍点]と軽く叩くと、一匹の青い蛇の頭が箱の穴からぬるぬると現われた。お絹は小さい土器《かわらけ》に神酒徳利《みきどっくり》のしずくをそそいで、その口さきへ押しやると、蛇は蜜をなめるように旨そうになめ尽くした。お絹は更に自分の手のひらに米をのせて出すと、蛇はさとい眼で左右を見まわしながら、ひと粒も残さずにのみ込んでしまった。
「お前、あたしを忘れちゃいけないよ。もう
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