林さん、あの人はずいぶん薄情だと思うよ」
「あら、林さんはもう少しさっきまで来ていましたよ」と、お君は慌てて打ち消すように言った。
「そう」と、お絹はさびしく笑った。「そりゃあよんどころなしの義理づくさ。あたし、どう考えてもあの人は人情がないと思う」
 一体、ここの家《うち》を逃げ出したというのがすでに頼もしくない。この夏頃からあたしに隠して列び茶屋へ遊びにゆく、それがまた憎らしい。たしかな証拠を握っていないけれど、どうもお里と林之助はひと通りの馴染みではないらしく思われる。証拠がないので今まで堪忍していたが、いよいよこうと見極《みきわ》めが付いたら、あたしは不二屋へ蛇を持って行って、いつかお此を責めたように、お里をむごたらしく責めてやりたい。お里の頸へ蛇をまき付けて、子供が野良犬をひきまわすように両国じゅうを引き摺って歩いてやりたいと思っていた。しかしそれももう出来ない。就いてはあたしの死んだのを幸いに、二人がいい気になって仲よくするようなことがあったら、どうぞあたしに成り代って仇を取ってくれと、彼女はしみじみと言った。
 お君はやはり涙ぐんで聞いていた。
「お前は子供でも蛇という味
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