りとそれを眺めていると、内からお絹の弱い声が聞えた。
「君ちゃん、君ちゃん。いないの」
「はい」
はっきりと返事をして、お君はあたふたと内へ駈け込むと、お絹はいつか眼を醒ましていて、薬をのませてくれと言った。まだ少し早いと思ったが、お君はすぐに薬鍋を温めにかかった。粥《かゆ》をたべるかと訊いたら、お絹は黙って首を振った。
托鉢《たくはつ》の坊主が門《かど》に立って鉦《かね》を叩いたので、お君は出て行って一文やった。薬が煮つまって枕もとへ持ってゆくと、お絹は苦しそうにひと口すすったが、それはほんの喉を湿《しめ》すに過ぎないらしかった。
「君ちゃん。あたし少しお前に言って置きたいこともあり、頼んで置きたいこともあるんだよ」と、お絹は案外はっきり言った。
これほどしっかりと口が利けるようならば、姐さんも少しよくなったのかしらと、お君はなんだか頼もしいようにも思われた。
「君ちゃん、お前にはいろいろ世話になったけれども、今度はあたしももういけないよ。あたしも覚悟しているよ」
お君は涙ぐんで聞いていた。
「そこで、あたしが頼むことというのは、お前も大抵察しているだろうけれど……。向柳原の
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