どうで死ぬもんだからなんて薄情なことはしっこなしですぜ」
林之助はだまってうなずいた。
「不二屋のお里のおふくろが死んだそうですね」と、豊吉はまた言った。
どこか急所をえぐられたように、林之助ははっ[#「はっ」に傍点]と顔色を変えて、すぐには返事が出来なかった。
十四
林之助が帰ると、やがて午《ひる》が近づいた。青物市ももうそろそろ引ける時刻になったので、観世物小屋に用のある人たちは一度に起《た》った。豊吉とお若は連れ立って帰った。お絹はもがき疲れてしばらく昏々《うとうと》と睡っていた。隣りのお婆さんもこの間に家の用を片付けて来たいといって帰った。
お絹の枕もとにはお君が一人さびしそうに坐っていたが、ことし十五で外の恋しい彼女は、やがて病人の寝息をうかがって、音のしないように格子をあけて、そこから半身を出して何を見るともなしに表を覗くと、長い往来は露地の幅だけに明るく見えて、そこにはいろいろの秋の姿をした人が廻り燈籠のように通った。※[#「魚+是」、第4水準2−93−60]《しこ》を売る声もきこえた。赤とんぼを追いまわる子供の黐竿《もちざお》も見えた。お君はうっと
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