いいからお帰り」
お絹に頭を撫でられて、蛇はおとなしく首を引っ込めた。彼女が再び箱をたたくと、待ちかねていたように第二の青い蛇が穴から首を出した。お絹はかれにも神酒と米をあたえた。そうして、同じようにあたしを忘れるなと言って聞かせた。かれが穴に隠れると更に第三の青い蛇が頭をあらわして、これもお絹の手から神酒と米とを授けられて、嬉しそうに首を垂れていた。彼女はその蛇の首をつかんで穴からずるずるとひき出すと、蛇は二つに裂けた紅い舌を火焔《ほのお》のようにへらへら[#「へらへら」に傍点]と吐き出しながら、お絹の痩せた手首へたわむれるように絡《から》みついた。
※[#歌記号、1−3−28]銚子《ちょうし》出るときゃ涙で出たが……
小声で唄いながら、お絹は片手で膝をたたいて拍子を取ると、蛇はなめらかな膚《はだ》に菱形《ひしがた》の尖った鱗《うろこ》を立てて、まぶたのない眼を眠るようにとじた。しかしかれはいつまでも安らけくその音楽を聞いていることを許されなかった。
※[#歌記号、1−3−28]今じゃ銚子の風もいや……
唄の声がふるえながら消えると同時に、彼女は尾の先きをつかんで、ずるずる
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