をしている中《うち》、一人が枯枝を拾う為に背後《うしろ》の木かげへ分入《わけい》ると、ここに大きな池があって、三羽の鴨が岸の浅瀬に降りている。這奴《こいつ》、幸いの獲物、此方《こっち》が三人に鳥が三羽、丁度お誂え向だと喜んで、忍び足で其の傍《そば》へ寄ると、鴨は人を見て飛ばず驚かず、徐《しず》かに二足ばかり歩いて又|立止《たちどま》る、この畜生めと又追縋ると、鴨は又もや二足ばかり歩む、歩めば追い、追えば歩み、二三|間《げん》ばかりも釣られて行く時、他の一人が此の体《てい》を見て、オイオイ止せよせ、例の怪物《えてもの》に相違ねえよと、声をかける。成程と心付いて其のまま引返《ひっかえ》して、私に其の噺をするから、ハテ不思議だと三人一所に、再び其の木かげへ往って見ると、エエ何の事だ、鴨は扨《さて》措いて、第一に其の池もない、扨はいよいよ怪物の所為《しわざ》だと、猶《なお》能《よ》くよく四辺《あたり》を見ると、其の辺は一面の枯草に埋っていて、三間ばかり先は切ッ立《たて》の崖になっているので、三人は思わず悸然《ぎょっ》として、若《もし》もウカウカと鴨に釣られて往こうものなら、此の崖から逆落しに滑
前へ
次へ
全7ページ中3ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
岡本 綺堂 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング