げてしまって、そのすきに奥から女を奪い出そうとする魂胆であったらしいが、外記の方にも油断はなかった。喜介が蛇のような手をそっと伸ばすと同時に、彼の腕はもう外記にしっかりと掴まれていた。
「武士の腰の物に眼をかける、おのれは盗賊だな」
掴まれた腕が外記の手を離れた時には、彼は狗《いぬ》ころのように庭さきに投げ出されていた。
つづいて外記の手は刀の柄にかかったので、彼はうろたえて這い廻って逃げた。ほかの二人も度を失ってばらばら[#「ばらばら」に傍点]と逃げ出した。空《から》駕籠をおろして門口《かどぐち》に待っていた駕籠屋も面食らって逃げた。
もとより斬る気はないが、おどしのために外記は縁を飛び降りて門口まで追って出た。彼らの遠くなったのを見とどけて再び内へ引っ返して、手水鉢《ちょうずばち》の水で足の泥を洗っていると、綾衣は手拭を持って来て綺麗に拭いてやった。
一旦はおどして追い返しても、ここの隠れ家を突き留めた以上は、大菱屋が泣き寝入りに済まそう筈がない。また出直して押して来るか、あるいは思い切って表沙汰にするかも知れない。女はもう眼に見えない網にかかっているのであった。
二人は
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