を終った綾衣は、これも寂しい思いで鉦の音を聴いていた。微かにきざんでゆく鉦の音は胸に沁みるようであった。浄閑寺は廓の女の捨て場所であるということも、今更のように考えられた。運の悪い病気の女は日の目も見えないような部屋へ押し込まれて、碌々に薬も飲まされないで悶《もだ》え死にする。その哀れな亡骸《なきがら》は粗末な早桶を禿《かむろ》ひとりに送られて、浄閑寺の暗い墓穴に投げ込まれる。そうした悲惨な例は彼女も今までにしばしば見たり聞いたりしていた。それでも寿命がつきて死んだ者はまだいい。心中してわれから命を縮めた者は、同じ浄閑寺の土に埋められながらも、手足を縛って荒菰に巻かれて、犬猫にも劣った辱《はず》かしめを受けるのである。
 その人たちの迷った魂は今夜の魂迎えにどこへ招かれて行くであろう。自分のからだも、やがては浄閑寺へ送られて、土の下からあの鉦の音を聴くようになるのかと思うと、綾衣もなんだか気が沈んで、生きながら暗いところへ引き入れられるようにも感じた。おさない時に死に別れた父母のことも思い出された。十九の歳に芝のあきんどから身請けの相談があったが、抱え主は金で折り合わず、自分も気に入ら
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