ばわりをする叔父のむかし気質《かたぎ》を、外記は肚《はら》の中であざわらった。命を惜しむ卑怯者といちずに自分を認めるのは間違っている。勿論、自分は人のために死のうとは決して思わないが、自分のためならなんどきでも命を捨てて見せる。外記は死を恐れる卑怯者か臆病者か、いまに叔父にもよく判る時節があろうと、彼は口をむすんで再びなんにも言わなかった。
 刀を鞘《さや》に納めたものの、五郎三郎はもうここに長居もできなかった。すぐに帰り支度をして、彼はお縫と三左衛門とに送られて出た。玄関を出るときに五郎三郎は二人にささやいて、外記は魂のぬけた奴、この上にどんな曲事《きょくじ》を仕出来《しでか》そうも知れない。お前たちも油断なく気をくばって、もし思案に能《あた》わぬことがあったら直ぐにおれのところへ知らせて来いと言った。
「おのれの心ひとつで一家一門、家来にまで苦労をかける。困った奴だ」
 五郎三郎の眼には涙が浮かんだ。草履取りを連れて出てゆくその人のうしろ姿を、お縫も三左衛門も陰った顔でいつまでも見送っていた。
 それから半※[#「日+向」、第3水準1−85−25]《はんとき》ほども過ぎた。塀の内に
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