くで碁を打っているのではなかった。いやいや相手になっている外記よりも、もっと忌《いや》な、苦しい、悲しい、切《せつ》ない思いを胸の奥に畳み込んで、無理に悠長らしい顔をつくっているのであった。
妹や家来たちが恐れていた通り、外記はいよいよ募る放埒のたたりで、近いうちにかの甲府勝手を仰せ付けられることになった。本人はまだ知らないが、支配頭から叔父にはもう内達《ないたつ》があった。この一家の上を掩《おお》っていた黒雲から、とうとう怖ろしい雷《らい》が落ちた。こうなることは内々予期していないでもなかったが、それを聞いた五郎三郎は今更のようにがっかりした。もうどうすることも出来ない。
藤枝の家はつぶされたも同然である。甥の身の上は自業自得《じごうじとく》の因果で是非ないとしても、自分の宗家《そうけ》たる藤枝の家をこのまま亡ぼしてしまっては、先祖に対しても申し訳がない、死んだ兄に対しても申し訳がない。五郎三郎は二日ほども胸を痛めた末に、思えばむごい、しかしこの時代の武士としてはまことにやむを得ない或る非常手段を考え出した。
彼は外記を自滅させようと覚悟した。表向きは頓死と披露して、妹のお縫に
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