相当の婿を取れば、藤枝の家にも瑕《きず》が付かず、親類縁者一同も世間に恥をさらさずに済むであろう。殺される甥は不憫であるが、家には替えられない、親類縁者の大勢《おおぜい》には替えられないと、こう決心した五郎三郎の眼からは煮え湯のような涙がこぼれた。鬼のような自分の心が情けなくも思われた。
 きょうは盂蘭盆というので、五郎三郎は赤坂の菩提寺に参詣した。墓場には昼でも虫が鳴いていた。彼は先祖代々の墓に香花《こうばな》や水をたむけて、苔の蒸した石にむかって甥を殺す余儀ない事情を訴えて、その足ですぐに番町へ廻って来たのである。彼は初めに甥を説得して詰め腹を切らせようかとも考えたが、もし不承知で四の五のいうと却って面倒である。いっそ不意に斬り殺してしまおうと思案を変えて、なにげない眼は碁盤の上に配っていながらも、張り詰めた心は相手の隙《すき》ばかりを狙っていた。
 叔父にも思惑がある。甥にも思う事がある。二人の打つ石はしどろ[#「しどろ」に傍点]であった。そばに観ている者があっては気が散っていけないと言って、五郎三郎は何かの邪魔になるお縫や三左衛門を追い払ってしまった。力のない石の音はしずかな部
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