うに瞬くうちに変ってゆく若い同士の埒《らち》なさを、綾衣はただ馬鹿らしいとばかりは思えなかった。外記と馴染みそめたその当座は、自分たちの間にもそうしたおさない他愛ない痴話《ちわ》や口説《くぜつ》の繰り返されたことを思い出して、三年前の自分がそぞろに懐かしくなった。
「盂蘭盆が過ぎたら……」と、十吉の声がきこえた。
「家《うち》のおっかさんもそう言っていた」と、お米の声も低くきこえた。
 盂蘭盆が過ぎたらいよいよ祝言をするというのではあるまいかと、綾衣は想像した。自分はその盂蘭盆まで生きていられる命だろうか。綾衣の肉は微かにおののいた。剣難の相があると言われたことも今更のように思い出された。
 遠くで雷《らい》の音がひびいた。かみなり嫌いの綾衣はいよいよ神経が鋭くなった。
 自分にも恋はある。あの子供らしい人たちがもっているのよりも、更に深い強い実《み》の入ったものをもっている。なんでよその恋が羨ましかろう。妬ましかろう。しかし自分たちは蜘蛛《くも》の巣にかかった蝶や蜻蛉《とんぼ》のように、苦しい、切ない、むごい、やがては命をとられそうな怖ろしいきずなに手足をくくられて悶《もが》いている
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