。それに引き替えて、あの人たちは自由である。花野を自由自在に飛びまわる蝶や蜻蛉である。綾衣はその自由が羨ましく妬ましく思われてならなかった。妬み深いのは廓の女の癖であると、彼女は自分で自分を戒めて、ひとを羨むのは恥かしいとも思った。妬むのはおとなげないとも思い直した。そうは思いながらも、二人の低い笑い声などが耳にはいると、綾衣は襖越しに何か皮肉なことばでも投げつけてやりたいような気がしないでもなかった。
「ほんに馬鹿らしい」と、綾衣は自分をまた叱った。外記の来る夜のことを考えたら、十吉の邪魔などのできた義理ではない。自分はなぜこう心がひがんで来たのかと、彼女はおのれを卑しみながら心はやっぱり二人の話し声の方に惹きつけられていた。
 家《うち》じゅうが急に暗くなったと思うと、窓に近い蓮池に雨の音がばらばら[#「ばらばら」に傍点]と聞えた。
「また降って来た」という十吉の声といっしょに、激しい雷が屋根の上をころげ廻るように鳴って通った。綾衣は思わず両手で耳をふさいだ。雨は滝のように降って来た。雷はつづけて鳴った。
 こういう時に外記が来あわせていて、二人が抱き合ったままでこの雷に撃たれて死
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