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四郎兵衞 仔細《しさい》もなしに咬み付くやうな、そんな病犬《やまいぬ》は江戸にやあゐねえや。白柄組《しらつかぐみ》とか名を付けて、町人どもを嚇《おど》してあるく、水野十郎左衞門の仲間のお侍、青山播磨様と仰しやるのは、たしかあなたでごぜえましたね。
萬藏 さうだ、さうだ。この正月に山村座《やまむらざ》のまへで、水野と喧嘩をしたときに、たしかに見かけた侍だ。
彌作 違《ちげ》えねえ。坂田の何とかいふ奴と一緒になつて、その白柄をひねくり※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]したのを、俺あちやんと覚えてゐるんだ。
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(長吉と仁助は床几をゆずり、四郎兵衞はまん中に腰をかける。)
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播磨 むゝ、白柄組の一人と知つて喧嘩を売るからは、さてはおのれは花川戸《はなかはど》の幡隨院長兵衞が手下の者か。
四郎兵衞 お察しの通り、幡隨院長兵衞の身内でも、ちつとは知られた放駒の四郎兵衞。
長吉 並木の長吉。
仁助 橋場の仁助。
萬藏 聖天の萬藏。
彌作 田町の彌作だ。
權次 やい、やい。こいつら素町人《すち
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