づたひにて十太夫足早に出づ。)
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十太夫 おゝ、もうお帰りぢや。(下の方へ行かんとしてお菊をみる。)お菊、まだそこに居つたのか。や、お皿をどうぞ致したか。これ、お菊。(あわてて縁に上る。)や、大切のお皿を真二つに……。こ、こりや何《ど》ういたしたのぢや。仔細をいへ、仔細を申せ。
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(十太夫はおどろき怒つて詰めよる。お菊は黙つて手をついてゐる。)
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十太夫 えゝ、黙つてゐては判らぬ。こ、こりや一体どうしたのぢや。さつきもあれほど申聞かせて置いたに……。かやうな粗相を仕出来《しでか》しては、そちばかりではない、この十太夫もどのやうな御咎《おとが》めを受けうも知れぬ。こりや飛んでもないことに相成つたぞ。
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(十太夫も途方に暮れてゐるところへ、奥の襖をあけて青山播磨つか/\出づ。)
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十太夫 お帰り遊ばしませ。御出迎へと存じましたる処、おもひも
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