のころ『文芸倶楽部《ぶんげいくらぶ》』の編輯主任をしていた森暁紅《もりぎょうこう》君から何か連載物を寄稿しろという註文があったので、「半七捕物帳」という題名の下《もと》に先ず前記の三種を提出し、それが大正六年の新年号から掲載され始めたので、引きつづいてその一月から「湯屋の二階」「お化《ばけ》師匠《ししょう》」「半鐘の怪」「奥女中」を書きつづけました。雑誌の上では新年号から七月号にわたって連載されたのです。
そういうわけで、探偵物語の創作はこれが序開《じょびら》きであるので、自分ながら覚束《おぼつか》ない手探りの形でしたが、どうやら人気にかなったというので、更に森君から続篇をかけと註文され、翌年の一月から六月にわたってまたもや六回の捕物帳を書きました。その後も諸雑誌や新聞の註文をうけて、それからそれへと書きつづけたので、捕物帳も案外多量の物となって、今まで発表した物語は約四十種あります。
半七老人は実在の人か――それについてしばしば問いあわせを受けます。勿論、多少のモデルがないでもありませんが、大体に於て架空の人物であると御承知ください。おれは半七を識《し》っているとか、半七のせがれ
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