互いにびっくりした様子でした。ハリソンさんは去年の九月、江戸の団子坂で菊人形を見物しているときに、女の巾着切りに逢いました。それが間違いのもとで、ハリソンさん夫婦も連れのヘンリーさんも、大勢に追っかけられてひどい目に逢いました。そのときの巾着切りがお角であったそうで、思いがけない再会に、ハリソンさんも一旦はおどろきましたが、お角はどこまでも自分が取ったのではないと云い張ります。わたしの先生もハリソンさんを宥《なだ》めて、この女は自分の親類で、決して悪いことをする者ではないと、いろいろに弁解しましたので、ハリソンさんもようよう納得《なっとく》しました。尤も団子坂でお角をつかまえた時に、お角はなんにも持っていなかったと云いますから、確かに巾着切りだという証拠も無いわけです。それが縁になって、お角も先生と一緒に、ハリソンさんの家《うち》へ時々たずねて行くようになりました」
「先生は金儲けのためにお角を連れて行ったのか」
「さあ、それはどうだか判りませんが、その後お角はひとりで、ハリソンさんの家へ行ったこともあります。ハリソンさんと二人づれで、神奈川の台の料理茶屋へ遊びに行ったこともあるそうで
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