半七捕物帳
蟹のお角
岡本綺堂
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)落着《らくぢゃく》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)上州|商人《あきんど》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「日+向」、第3水準1−85−25]
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一
団子坂の菊人形の話につづいて、半七老人は更に「蟹のお角」について語り出した。団子坂で外国人らの馬をぬすんだ一件は、馬丁平吉の召し捕りによってひと先ず落着《らくぢゃく》したが、その関係者の一人たる蟹のお角は早くも姿をくらまして、ゆくえ不明となった。したがって、この物語は前者の姉妹篇とでも云うべきものである。
「蟹のお角という女は、だんだん調べてみると札付《ふだつ》きの莫連《ばくれん》もので、蟹の彫りものは両腕ばかりでなく、両方の胸にも彫ってあるのです。つまり二匹の蟹の鋏が右と左の乳首を挟んでいるという図で、面白いといえば面白いが、これはなかなかの大仕事です。大体ほりものというものは背中へ彫るの
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