かねて、半七と松吉は早々に宿を出ると、きょうも晴れて暑かった。
「藪入りにはおあつれえ向きだが、おれたちには難儀だな」と、松吉は真っ青な空を仰ぎながら云った。
 宮の渡しを越えて、神奈川の宿《しゅく》にゆき着いて、西の町の島田の家をたずねると、思いのほかに早く知れた。東海道から小半町も山手へはいった横町の右側で、畑のなかの一軒家のような茅葺《かやぶき》屋根の小さい家がそれであった。表には型ばかりのあらい垣根を結《ゆ》って、まだ青い鶏頭《けいとう》が五、六本ひょろひょろと伸びているのが眼についた。門の柱には「西洋写真」という大きい看板が掛けてあった。
 門と云っても木戸のような作りで、それを押せばすぐにあいた。
「ごめんなさい」
 三五郎が先ず声をかけると、二十歳《はたち》ばかりの若い男が内から出て来た。
「島田先生はお内ですか」
 男は暫く無言で三五郎の顔をながめていたが、やがて低い声で答えた。
「先生は留守です」
「どちらへお出かけですか」
「江戸へ……」
 入れかわって半七がずっとはいった。
「少しお前さんに訊きたいことがある。わたしらは戸部のお奉行所から来た者です。まあ、縁さきを
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