貸しておくんなさい」
半七と三五郎は、庭を通って縁さきへ腰をかけた。松吉は裏手へまわって、人の出入りを見張っていた。奉行所から来たと聞いて、男も形をあらためて挨拶した。
「なにか御用でございますか」
「おまえさんは先生のお弟子さんかえ」と、半七は訊《き》いた。
「はい。吾八と申します」
見たところ、彼は正直そうな、おとなしやかな若者であった。
「先生は江戸へ何しに行ったのですね」
「商売のことで時々江戸へまいります。今度も大方そうだろうと思います」
「ここの家《うち》へお角さんという人が来ますかえ」
吾八は少し躊躇したが、それでも隠さずに答えた。
「はい」
「先生の親類ですかえ」
吾八は黙っていた。
「それとも色女かえ」
半七は笑いながら訊いた。吾八はやはり黙っていた。
「お角は始終ここの家に寝泊まりしているのですか」
「いいえ、時によると半月ぐらい泊まっていることもありますが……」
「先生は異人館のハリソンのところへ、始終出這入りをしているそうですね」
「はい。毎月五、六度ぐらいは参ります」
「お角もハリソンの家《うち》に行ったことがありますかえ」
吾八はまた黙ってしまっ
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