んというのだ」
「庄吉です。酒はすこし飲むが、別に道楽もない様子で、世間の評判も悪くないそうです。写真の修業のためにハリソンの家《うち》へ出入りをしていることは、仲間内でもみんな知っていて、本人もおれは西洋人について修業しているのだなどと自慢していると云うことです。そこで、親分、どうします。あしたは早々に神奈川へ行ってみますか」
「むむ。コックと雇い女を調べてえのだが、引き挙げられていちゃあちっと面倒だ。ともかくもあしたは神奈川へ行ってみよう。本人は留守でも弟子が残っているだろう」
「じゃあ、あした又出直してまいります」
それから世間話などをして、三五郎は帰った。あしたは早いからと云うので、今夜は五ツ半(午後九時)頃から蚊帳《かや》にはいったが、あいにくと上州|商人《あきんど》の三人づれが隣り座敷に泊まり合わせて、夜の更けるまで生糸の売り込みの話などを声高《こわだか》にしゃべっているので、半七らは容易に眠られなかった。横浜は江戸よりも涼しいと聞いていたが、残暑の夜はやはり寝苦しかった。
きょうは盆の十六日、横浜にも藪入りはあると見えて、朝から往来は賑わっていた。三五郎の来るのを待ち
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