月にだいぶ焼けたと云うから、また様子が変っているかも知れねえ」
「横浜は焼けましたかえ」
「十月の九日から十日の昼にかけて、町屋《まちや》はずいぶん焼けたそうだ。異人館は無事だったと云うから、ハリソンの家《うち》なんぞは元のままだろう。火事を逃がれても、夫婦が殺されちゃあなんにもならねえ」
「浪士が斬り込んだのじゃあありますめえね」
「おれも一旦はそう思ったが、侍ならば刀でばっさりやるだろう。小刀のようなもので喉を突いたり犬を使ったり、そんな小面倒なことをしやあしめえ」
「そうでしょうね。じゃあ、あした又、様子を聞きに来ます」
 多吉の帰ったあとで、半七は旅支度にかかった。横浜までは一日の道中に過ぎないが、その時代には一種の旅である。半七は女房に云いつけて、新らしい草履や笠を買わせた。

     三

 あくる朝、半七は八丁堀同心の屋敷へ行って、丹沢五郎治をたずねた。丹沢は去年の団子坂一件に立ち会った関係があるので、その異人夫婦の死を聞かされて眉をよせた。
「よくよく運の悪い連中だな。そういう訳なら行って見てやれ」
 彼も多吉とおなじように、こんな事がいつまでも捗取《はかど》らないと
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