知して下さるだろう。ところで、例の大川の一件だが……。三五郎の話を聞いているうちに、ふいと胸に浮かんだことがある。というのは、大川へほうり込まれた死骸のひたいには、犬という字が書いてあったとか云うのだが、横浜で死んだ女異人は洋犬《カメ》に啖い殺されたのだそうだ。江戸と横浜じゃあちっと懸け離れ過ぎているようだが、世の中の事は何処にどういう糸を引いていねえとも限らねえ。どっちも犬に縁があるのを考えると、そこに何かの係り合いがあるのじゃああるめえか」
「そう云えば、そんなものかも知れねえが……」と、多吉は疑うように首をかしげた。「なんぼ何でも横浜で殺したものを江戸までわざわざ運んで来やあしますめえ。あっちにも捨て場所は幾らもある筈だ」
「理窟はそうだが、理窟でばかり押せねえことがある」と、半七も首をかしげながら云った。「なにしろ留守をたのむから、おめえは大川の一件を根《こん》よく調べてみてくれ。おれは横浜へ行って、ひと働きしてみよう」
「三五郎は別として、ほかに誰か連れて行きますかえ」
「松吉を連れて行こう。あいつは去年も一緒に行って、少しは土地の勝手を知っている筈だ。もっとも横浜も去年の十
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