れが何か嗅ぎ出したとみえて、明くる日になると野原にあつまって、頻りに吠える。初めは打っちゃって置いたんですが、あまり吠えるので大吉親子も不安心になった。もしや死骸の埋めてある所を掘り返されたりしては困る。犬がむやみに吠えると人に怪しまれるかも知れない。二人は鋤《すき》と鍬《くわ》を持って現場を見届けに出て行くと、死骸に別条はない。集まっている犬を追い散らして、芒をかき分けながら帰って来ると、丁度わたくし共と顔をあわせた。それが二人の運の尽きで、さっきお話し申したような事になってしまいました。どう考えても悪いことは出来ませんね」
「四百両のゆくえは知れないんですか」
「次右衛門の店の床下に埋めてありました。その金はどう処分されたか確かには知りませんが、都合よく関口屋の手へ渡ったように聞いています。関口屋の娘のお袖は、かむろ蛇の正体が判ったので、急に気が強くなったのでしょう、やがて全快して元のからだになりました。この娘が大吉らに狙われた御本尊でありながら、とうとう無事に助かりました。人間の運は判りません」
「八つ手の葉にお袖死ぬと書いたのは、お由の仕業ですか」
「お由の小細工です。わたくし
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