》の古家ですから、年造は何の苦もなしに台所の雨戸をこじ明けてはいる。例のごとく、大吉は外で見張り番を勤めていました。
 大吉は現場を見ていないというので、詳しいことは判りませんが、年造は小刀のような物を持って、次右衛門の寝込みを襲って、思い通りに相手を仕留めて、さてその金のありかを探すと、仏壇の抽斗《ひきだし》に百両、ボロ葛籠《つづら》の底から百両、あわせて二百両だけは見付け出しましたが、残りの四百両の隠し場所がわからない。そのうちに近所の者が起きて来るらしいので、怱々《そうそう》にそこを逃げ出して、二人は無事に牛込へ帰りました。
 目あての六百両は残念ながら二百両しか手に入らない。それでも年造は正直に山分けにして、大吉も先ず納得したんですが、その親父の忠兵衛も悪い奴、その山分けの百両を年造に取られるのが惜しくなって、せがれの大吉をそそのかし、年造が疲れて寝ているところを絞め殺して、百両を取り上げてしまいました。死骸は寺の裏手の草原に埋め、ほとぼりの少し冷めた頃に、親子は二百両を持って、故郷の大阪へ帰るつもりでした。
 死骸は夜の明けないうちに埋めたんですが、この辺には野良犬が多い。そ
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