がら、大きい声で救いを呼んでいると、鬼はもう近いところまで追い迫って来ました。
 お客人は気も魂も身に添わずというわけで、ころげ廻って逃げるうちに、力が尽きて地にたおれると、鬼はここぞと飛びかかって来るとき、たちまち柱に突き当って、がちりという音がしたかと思うと、それぎりでひっそりと鎮まってしまいました。そこへ大勢の僧が駈けつけて、半死半生でたおれているお客人を介抱して、さてそこらを検《あらた》めてみると、骸骨が柱にあたってばらばらに頽《くず》れていました。
 その後に、その死人の家から棺をうけ取りに来ましたが、死骸が砕けているのを見て承知しません。なんでも寺《じ》ちゅうの者が棺をあばいたに相違ないといって、とうとう訴訟沙汰にまでなりましたが、当夜の事情が判明して無事に済みました」

   土偶

 鄭安恭《ていあんきょう》が肇慶《ちょうけい》の太守となっていた時のことである。
 夜番の卒《そつ》が夜なかに城中を見まわると、城中の一つの亭《てい》に火のひかりの洩れているのを発見したので、怪しんでその火をたずねてゆくと、そこには十余人の男と五、六人の小児とが集まって博奕《ばくち》をしてい
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