》した。その哭するごとに、鳥の群れがたくさん集まって来るのである。官から使者を派して取調べさせると、果たしてその通りであったので、彼は孝子として村の入口に表彰された。
後に聞くと、この孝子は哭するごとに、地上に餅を撒《ま》き散らして鳥にあたえた。それが幾たびも続いたので、その泣き声を聞きつけると、鳥の群れは餅を拾うために集まって来たのであった。[#地から1字上げ](同上)
壁龍
柴紹《さいしょう》の弟なにがしは身も軽く、足も捷《はや》く、どんな所へでも身を躍らせてのぼるばかりか、十余歩ぐらいは飛んで行った。
唐の太宗《たいそう》皇帝が彼に命じて長孫無忌《ちょうそんむき》(太宗の重臣)の鞍を取って来いと言った。同時に無忌にも内報して、取られないように警戒しろと注意した。その夜、鳥のようなものが無忌の邸内に飛び込んで、二つの鞍を二つに切って持ち去った。それ逃がすなと追いかけたが、遂に捉え得なかった。
帝はまたかれに命じて丹陽公主《たんようこうしゅ》(公主=皇女)の枕を取って来いと言った。それは金をちりばめた函《はこ》付きの物である。かれは夜半にその寝室へ忍び入って、手をも
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