その髑髏が墜《お》ちなければ、化けて人となると言い伝えられている。
劉元鼎《りゅうげんてい》が蔡州《さいしゅう》を治めているとき、新破《しんぱ》の倉場《そうじょう》に狐があばれて困るので、劉は捕吏《ほり》をつかわして狐を生け捕らせ、毎日それを毬場《まりば》へ放して、犬に逐《お》わせるのを楽しみとしていた。こうして年を経るうちに、百数頭を捕殺した。
後に一頭の疥《かさ》のある狐を捕えて、例のごとく五、六頭の犬を放したが、犬はあえて追い迫らない。狐も平気で逃げようともしない。不思議に思って大将の家の猟狗《かりいぬ》を連れて来た。監軍《かんぐん》もまた自慢の巨犬を牽《ひ》いて来たが、どの犬も耳を垂れて唯その狐を取り巻いているばかりである。暫くすると、狐は跳《おど》って役所の建物に入り、さらに脱け出して城の墻《かき》に登って、その姿は見えなくなった。
劉はその以来、狐を捕らせない事にした。道士の術のうちに天狐の法というのがある。天狐は九尾で金色で、日月宮に使役《しえき》されているのであるという。
妬婦津
伝えて言う、晋の大始《たいし》年中、劉伯玉《りゅうはくぎょく》の妻|段氏
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