二の門があって、それは訳なく明きましたが、門の内には木で作った人が何十人も控えていて、それが一度に剣をふるったから堪《た》まりません。さきに立っていた五、六人はここで又斬り倒されました。こちらでも棒をもってむやみに叩き立てて、その剣をみな撃ち落した上で、あたりを見まわすと、四方の壁にも衛兵の像が描いてあって、南の壁の前に大きい漆《うるし》塗りの棺が鉄の鎖《くさり》にかかっていました。棺の下には金銀や宝玉のたぐいが山のように積んである。さあ見付けたぞとは言ったが、前に懲《こ》りているので、迂闊《うかつ》に近寄る者もなく、たがいに顔をみあわせていると、俄かに棺の両角から颯々《さっさつ》という風が吹き出して、沙《すな》を激しく吹きつけて来ました。あっ[#「あっ」に傍点]と言ううちに、風も沙もますます激しくなって、眼口《めくち》を明けていられないどころか、地に積む沙が膝を埋めるほどに深くなって来たので、みな恐れて我れ勝《が》ちに逃げ出しましたが、逃げおくれた一人は又もや沙のなかへ生け埋めにされました。
 外へ逃げ出して見かえると、門は自然に閉じて、再びはいることは出来なくなっています。たといは
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