を見ると、よほど由緒のあるものに相違ありません。松林をはいって二百歩ほども進んでゆくと、その塚の前に出ました。生い茂った草のなかに大きい碑が倒れていましたが、その碑はもう磨滅《まめつ》していて、なんと彫ってあるのか判りませんでした。ともかくも五、六十丈ほども深く掘って行くと、一つの石門がありまして、その周囲《まわり》は鉄汁をもって厳重に鋳固めてありました」
「それをどうして開いた」
「人間の糞汁《ふんじゅう》を熱く沸かして、幾日も根《こん》よく沃《そそ》ぎかけていると、自然に鉄が溶けるのです。そうして、ようようのことで、その石門をあけると驚きました。内からは雨のように箭《や》を射出して来て、たちまち五、六人を射倒されたので、みな恐れて引っ返そうとしましたが、わたくしは肯《き》きませんでした。ほかに機関《からくり》があるわけではないから、あらん限りの箭を射尽くさせてしまえば大丈夫だというので、こちらからも負けずに石を投げ込みました。内と外とで箭と石との戦いが暫く続いているうちに果たして敵の矢種《やだね》は尽きてしまいました。
それから松明《たいまつ》をつけて進み入ると、行く手に又もや第
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