昌《ぶんしょう》が校書郎を勤めていた関係で、若いときから奇編秘籍を多く読破して、博覧のきこえの高い人物でありました。官は太常外卿に至りまして、その著作は『酉陽雑爼』(正編二十巻、続集十巻)をもって知られて居ります」
古塚の怪異
唐の判官《はんがん》を勤めていた李※[#「しんにゅう+貌」、第3水準1−92−58]《りばく》という人は、高陵《こうりょう》に庄園《しょうえん》を持っていたが、その庄に寄留する一人の客がこういうことを懺悔《ざんげ》した。
「わたくしはこの庄に足を留めてから二、三年になりますが、実はひそかに盗賊を働いていたのでございます」
李※[#「しんにゅう+貌」、第3水準1−92−58]もおどろいた。
「いや、飛んでもない男だ。今も相変らずそんな悪事を働いているのか」
「もう唯今は決して致しません。それだから正直に申し上げたのでございます。御承知の通り、大抵の盗賊は墓あらしをやります。わたくしもその墓荒しを思い立って、大勢の徒党を連れて、さきごろこの近所の古塚をあばきに出かけました。塚はこの庄から十里(六丁一里)ほどの西に在って、非常に高く、大きく築かれているの
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