云々《うんぬん》。――
これで三本足のがま[#「がま」に傍点]の由来はわかった。それのみならず更に梅沢君をよろこばせたのは、その霊あるがま[#「がま」に傍点]が金華将軍と呼ばれることであった。梅沢君の俳号を金華というのに、あたかもそこへ金華将軍の青蛙が這い込んで来たのは、まことに不思議な因縁であるというので、梅沢君はその以来大いにこのがま[#「がま」に傍点]を珍重することになって、ある書家にたのんで青蛙堂という額を書いてもらった。自分自身も青蛙堂主人と号するようになった。
その青蛙堂からの案内をうけて、わたしは躊躇した。案内状にも書いてある通り、きょうは朝から細かい雪が降っている。主人はこの雪をみて俄かに今夜の会合を思い立ったのであろうが、青蛙堂は小石川の切支丹坂をのぼって、昼でも薄暗いような木立ちの奥にある。こういう日のゆう方からそこへ出かけるのは、往きはともあれ、復《かえ》りが難儀だと少しく恐れたからである。例の俳句会ならば無論に欠席するのであるが、それではないとわざわざ断り書きがしてある以上、何かほかに趣向があるのかも知れない。三月三日でも梅沢君に雛祭りをするような女の子はな
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