青蛙堂鬼談
岡本綺堂

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)青蛙神《せいあじん》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)春雪|霏々《ひひ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「禾+朮」、第3水準1−89−42]
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   青蛙神《せいあじん》


     一

「速達!」
 三月三日の午《ひる》ごろに、一通の速達郵便がわたしの家の玄関に投げ込まれた。

 拝啓。春雪|霏々《ひひ》、このゆうべに一会なかるべけんやと存じ候。万障を排して、本日午後五時頃より御参会くだされ度《たく》、ほかにも五、六名の同席者あるべくと存じ候。但し例の俳句会には無之《これなく》候。
 まずは右御案内まで、早々、不一《ふいつ》。
    三月三日朝
[#地から3字上げ]青蛙堂主人

 話の順序として、まずこの差出人の青蛙堂主人について少し語らなければならない。井《い》の中の蛙《かわず》という意味で、井蛙《せいあ》と号する人はめずらしくないが、青いという字をか
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