また捨てられた。それから又ある人に拾われたが、これも一年ばかりでまた捨てられた。拾われては捨てられ、捨てられては拾われ、その後二、三人の手を経るうちに、少女はともかくも七つになった。これまで生長すれば、乞食をしてもどうにか生きてゆかれるので、人のなさけにすがりながら今まで露命をつないでいると話した。
「まあ、可哀そうに……。」と、庄兵衛の妻は涙ぐんだ。「おまえのような可愛らしい子が、なぜ行く先ざきで捨てられるのか。」
「それはわたくしが不具者《かたわもの》であるからでございます。」と、少女はその美しい眼に涙をやどした。「世にも少ない不具者を誰が養ってくれましょう。はじめは不憫を加えてくれましても、やがては愛想をつかされるのでございます。」
 かれは年よりもませた口ぶりで言った。しかし見たところでは、人並すぐれた容形《なりかたち》で、別に不具者らしい様子もないので、妻も庄兵衛も不思議に思った。恥かしいのか、悲しいのか、少女は身をすくめ、身をふるわせて、ただすすり泣きをしているばかりであるのを、夫婦がいろいろになだめすかして詮議すると、かれが不具である子細が初めて判った。
 土に坐っている
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