つづいて養子、つづいて養女、それがみな七、八年とは続かないでばたばたと倒れてしまって、僅かのあいだに今の主人が六代目というわけだそうです。
今の主人もやはり養子で、年も若いので、三十年奉公している王という男が、万事の世話をしている。これはなかなかの忠義者で、家に妖ある事を知りながら、引きつづく不幸の中に立って、徐の一家を忠実に守護しているのだそうです。そういう次第で、近所でも王の忠義には同情しているが、家に妖ありとして徐の一家をひどく恐れ嫌っている。諸君はなんにも知らないで、うかうかその門をくぐろうとするのを見て、かの若い支那人は親切に注意したが、詞《ことば》がよく通じないので諸君は顧《かえ》りみずして去ったと言って、あとでまだ不安に思っているようでした。」
「ははあ、そういうわけですか。実はもうその妖に逢いましたよ。」と、T君はまじめで言った。
「妖に逢った……。どんなことがあったのです。」と、S君もまじめで訊きかえした。
「いや、冗談ですよ。」と、僕は気の毒になって打消した。「なに、ここの家のむすめの病気を診《み》てくれと頼まれて、T君が例の美人療治をやったのですよ。」
「はあ、
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