いた通り、庭の小径《こみち》の影の多いところを明かるく照らすほどに、その人は光り輝いているのであった。
彼女の顔は前のときよりも、いっそうはっきりと現われた。そうして、彼は天真爛漫な柔和な娘の表情に、いたく心を打たれた。こんな性質を彼女が持っていようとは、彼の考えおよばないところであったので、彼女がいったいどんな質《たち》の人であろうかと、彼は新たに想像してみるようになった。彼は忘れもせずに、この美しい娘と、噴水の下に宝石のような綺麗な花を咲かせている灌木と、この両者の類似点を再び観察し、想像するのであった。――この類似は、彼女の衣服の飾りつけと、その色合いの選択とによって、ベアトリーチェが弥《いや》が上にも空想的気分を高めたからであった。
灌木に近づくと、彼女はあたかも熱烈な愛情を有しているかのように、その両腕を大きくひらいて、その枝をひき寄せて、いかにも親しそうに抱えた。その親しさは、彼女の顔をその葉のうちに隠し、きらめく縮れ毛は皆その花にまじって埋められてしまうほどであった。
「|私の姉妹《マイ・シスター》! あなたの息をわたしに下さい」と、ベアトリーチェは叫んだ。「わたしは
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