う存ずるが、奉公さする心はないか。
夜叉王 ありがたい御意にござりまするが、これは本人の心まかせ、親の口から御返事は申上げられませぬ。
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(桂は臆せず、すゝみ出づ。)
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かつら 父樣。どうぞわたしに御奉公を……。
頼家 うい奴ぢや。奉公をのぞむと申すか。
かつら はい。
頼家 さらばこれよりその面をさゝげて、頼家の供してまゐれ。
かつら かしこまりました。
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(頼家は起《た》つ。五郎も起つ。桂もつゞいて起つ。楓は姉の袂をひかへて、心許《こゝろもと》なげに囁く。)
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かへで 姉さま。おまへは御奉公に……。
かつら おまへは先程、夢のやうな望みと笑うたが、夢のやうな望みが今叶うた。
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(かつらは誇りがに見かへりて、庭に降り立つ。)
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僧 やれ、やれ、これで愚僧も先づ安堵いたした。夜叉王どの、あす又逢ひませうぞ。
[#こ
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