毒草と知った以上は、あやまって口へ入れる筈はありません。ねえ、そうでしょう。おそらく三人のうちの誰かがそれをそっと持って帰って食わせたと……。まあ、判断するのが正当じゃありますまいか。勿論それは沢桔梗の中毒と決まった上のことですが、どうも前後の事情から考えると、女学生と毒草と、その間に何かの関係があるように認められるじゃありませんか。」
「そうなると、生き残った女学生が第一の嫌疑者ですね。」
「そうです。服部近子という女、彼女が第一の嫌疑者です。それから遠山という学生は死んだ女学生の亀井兼子とおかしいのですよ。なんでも往来なかで行き違ったときに、両方で花を投げ合ってふざけていたといいますからね。」
「もう一人の学生はどうです。」
「さあ、水島の方はどうだか判りません。それが藤田みね子と関係があれば、うまくふた組揃うのですがね。」と、彼は微笑を洩らしていた。
二階へ帰ってから僕はまた考えた。だんだんに端緒は開けて来ながら、僕にはやはりその以上の想像を逞ましゅうすることが出来なかった。僕は自分の頭脳《あたま》の悪いのにつくづく愛想をつかした。通信員の密告が動機になったのかどうか知らないが
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