やめて、弟の仕送りで気楽に暮して行かれるのは結構ですが、お金には内緒の男がいる。上手に逢曳をしているので今まで誰にも覚られなかったのですが、お金には新内松《しんないまつ》という悪い男が附いているのです。以前は新内の流しを遣っていて、今の商売は巾着切り、そこで綽名を新内松という苦味走った大哥《あに》さんに、お金はすっかり打込んでいる。新内松と矢飛白おきん、その頃ならば羽左衛門に田之助とでも云いそうな役廻りですが、この方には大した芝居もなくて済んでいたところへ、十九年ぶりで弟の庄之助が突然にたずねて来て、自分の姉として世話をして遣ろうという。お金に取っては有難迷惑です。
たとい本所の屋敷へ引取られないでも、今の商売をやめて弟の世話になるのは、いかにも窮屈であり、又自分の男のかゝり合いから、どんなことで弟に迷惑をかけないとも限らない。さりとて新内松と手を切って、堅気に暮すなどという心は微塵もないので、お金はなんとかして庄之助の相談を断りたいと思ったが、まさかに巾着切りを男に持っていますと正直に云うことも出来ない。よんどころなく好い加減の挨拶をして其場は別れたのですが、もとより矢場の稼ぎを止
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