三浦老人昔話
岡本綺堂

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)沓《くつ》ぬぎには

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)清元|喜路《きじ》太夫

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)屡※[#二の字点、1−2−22]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)なか/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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桐畑の太夫

       一

 今から二十年あまりの昔である。なんでも正月の七草すぎの日曜日と記憶している。わたしは午後から半七老人の家をたずねた。老人は彼の半七捕物帳の材料を幾たびかわたしに話して聞かせてくれるので、きょうも年始の礼を兼ねてあわ好くば又なにかの昔話を聞き出そうと巧らんで、から風の吹く寒い日を赤坂まで出かけて行ったのであった。
 格子をあけると、沓《くつ》ぬぎには新しい日和下駄がそろえてある。この頃はあまり世間と交際《つきあい》をしないらしい半七老人の家《うち》にも、さすがは春だけに来客
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