背中を墨や朱で綺麗に彩色している。ある者は雲に竜を彫ってある。ある者は巖《いわ》に虎を彫っている。ある者は義経を背負《しょ》っている。ある者は弁慶を背負っている。ある者は天狗を描いている。ある者は美人を描いている。こういうのが沢山ごろ[#「ごろ」に傍点]/\しているなかで、大哥と呼ばれる清吉ひとりが、生れたまゝの生白い肌を晒していると云うのは、幅の利かないことおびたゞしい。若い者だから無理はありません。清吉はひとに内証で涙を拭いていることもあったそうです。
 この初島の近処に梅の井とかいう料理茶屋があって、これも可なりに繁昌していたそうですが、そこの娘にお金《きん》ちゃんという美《い》い女がいました。清吉とは一つ違いの十八で……。と云ってしまえば、大抵まあお話は判っているでしょう。まあ、なにしろそんなことで、お金清吉という相合傘が出来たと思ってください。両方の親達も薄々承知で、まあ出来たものならばゆく/\は一緒にしてやろう位に思っていたのです。芝居でするように、こゝで敵役の悪《わる》侍なんぞが邪魔に這入らないんですから、お話が些《ちっ》と面白くもないようですが、どうも仕方がありません。
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