押込み、外から垂簾《たれ》をおろす。おかんは不安らしく表をのぞいてゐると、路地の口より石子伴作は捕方《とりかた》の者ふたりを連れ、雲哲と願哲を先に立てて出づ。)
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
伴作 左官の勘太郎は確かにこの裏にまゐつてゐるな。
雲哲 長屋の者と喧嘩をして居ります。
伴作 喧嘩をいたしてゐるか。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから2字下げ]
(伴作はつか/\と進み來る。權三夫婦、助十兄弟は薄氣味惡さうにあとへ退る。)
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
伴作 豐島町の左官屋勘太郎はいづれへまゐつた。
四人 え。(顏をみあはせる。)
伴作 こゝにまゐつてゐる筈ではないか。
權三 (曖昧に。)いえ、そんな者は……。
伴作 (雲哲等をみかへる)たしかに來てゐると申したな。
雲哲 はい。その勘太郎は……。
助十 (あわてて眼で制す。)その勘太郎は……。もう歸りましてございます。
伴作 (うたがふやうに。)歸つたか。
願哲 でも、たつた今までこゝにゐた筈だが……。
權三 なに、歸つたよ、歸つたよ。この
前へ 次へ
全84ページ中77ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岡本 綺堂 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング