《あつけ》に取られたやうに眺めてゐると、與助は猿の死骸をかゝへて泣き出す。)
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與助 おゝ、猿めが死んだ、死んだ。
雲哲 死んだ、死んだ。
おかん まあ、可哀さうだねえ。
勘太郎 いや、これはわたしが惡かつた。猿は死にましたか。
與助(泣く。)死にました、死にました。
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(勘太郎は紙入から金三枚を取出し、紙にのせて出す。)
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勘太郎 なにしろ猿めが無暗に飛びついて來るので、わたしも夢中になつて飛んだことをしてしまひました。お前さんの商賣道具をなくなした償《つぐな》ひと、云つては少いかも知れないが、これでまあ堪忍してください。
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(與助はだまつて泣いてゐる。)
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雲哲 (與助のそばに寄る。)商賣道具の猿を殺されては、おまへも定めて困るだらうが、三兩といふ金があれば又どうにかなる。
願哲 
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