#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
助十 この野郎、どうしても唯は置かねえぞ。
助八 喧嘩なら廣いところへ出て來い。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから2字下げ]
(臺所の被れ障子を蹴放して、助八は擂粉木《すりこぎ》を持ちて跳《をど》り出づ。つゞいて助十は出刃庖丁《でばぼうちやう》を持ちて出づ。)
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
おかん あら、隣でも大變だよ。
與助 あつちは刃物を特つてゐる。これはあぶない。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから2字下げ]
(與助は猿を縁におろして、怖々《こは/″\》ながら留めようとしてゐると、上のかたより願人坊主の雲哲と願哲は商賣に出る姿にて、住吉踊の傘をかつぎて出で、これを見て騷ぐ。)
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
雲哲 やあ、やあ、又はじめたのか。
願哲 刃物をふりまはしては劍難《けんのん》だ。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから2字下げ]
(助十と助八は捨臺詞《すてぜりふ》にて鬪つてゐる。雲哲と願哲は思案して、權三の家の土間から駕籠を持ち出し、與
前へ
次へ
全84ページ中56ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
岡本 綺堂 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング