ひぢん》で、なんだか武者震《むしやぶる》ひがして來たようだ。
權三 大將の大屋さんが顫《ふる》へ出しちやあ困るぜ。
助十 どうぞしつかりお頼み申しますよ。
六郎 なに、大丈夫。さあ、威勢よく出陣だ。
彦三郎 皆さん、おねがひ申します。
權三 さあ、繰出《くりだ》せ。
助十 くり出せ。
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(六郎兵衞は先に立ち、助八と雲哲は彦三郎をのせたる駕籠をかきあげると、雲哲は又よろける。助八も一緒によろける。權三と助十は願哲と與助に繩を取られてゆく。おかんは不安らしく見送る。石町《こくちやう》の夕七つの鐘きこゆ。)
[#ここで字下げ終わり]
[#地から2字上げ]――幕――
第二幕
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前の場とおなじ道具。權三と助十の家。第一幕より一月ほど後の朝。
(權三の家では、權三とおかんが酒の膳を前にして、夫婦喧嘩をしてゐる。)
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權三 (片肌ぬいで。)やい、やい、この阿魔《あま》。叩つ殺すからさう思へ。
おかん さあ、殺せるなら殺して御覽。いくら自分の女房でも、横町
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