で字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
助八 地獄の沙汰も金次第といふが、身上《しんしやう》ふるつても二百の錢しかねえ。これでも何かの役に立つかも知れねえから、持つて行くがいゝぜ。(助十のふところに押込む。)
助十 唯つた二百ばかりがどうなるものか。見つともねえから止《よ》せ、止せ。第一それをおれに呉れてしまふと、あしたの米を買ふ錢があるめえ。
助八 なに、おれは一日ぐらゐ食はずと生きてゐられらあ。まあ、まあ、持つて行く方がいいよ。
おかん ほんたうに心細くつてならないねえ。(權三に。)おまへさんにも幾らか持たして上げたいんだけれど……。ちよいとお待ちよ。表の質屋へ行つて來るからさ。
權三 そんなことをしてゐると遲くなる。すぐに歸つて來るんだから、錢なんぞは要らねえ、要らねえ。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから2字下げ]
(上のかたより雲哲は夏羽織を持ちて出づ。)
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
六郎 御苦勞、御苦勞。(羽織をきる。)さつきも云ふ通り、おれもこの年になるが、かういふ事は初めてだ。當年六十歳の初陣《う
前へ
次へ
全84ページ中50ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
岡本 綺堂 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング