勘太郎の仕業であらうと存じますと、はつきり[#「はつきり」に傍点]云ふのだ。(考へて。)彦三郎さんは大丈夫だらうが、おまへ達にそれが出來るか。
權三 出來ても出來ねえでも仕樣がねえ。今も嚊《かゝあ》に云はれた通り、一つ長屋の彦兵衞さんが繩附きになつて出て行くのを知つてゐながら、今まで默つてゐたのはどうも良くねえ。實はわつしも内々は氣が咎《とが》めて、なんだか寢ざめが好くなかつたのだから、その罪ほろぼしに出來るだけ遣つてみませうよ。
彦三郎 なにぶんお願ひ申します。(助十に。)おまへさんにも宜しくお頼み申します。
助十 まあ、心配しなさんな。かう見えても江戸つ子の神田つ子だ。自棄《やけ》のやん[#「やん」に傍点]八で度胸を据ゑた日にやあ、相手が大岡樣でもなんでも構はねえ、云うだけのことは皆んなべら[#「べら」に傍点]/\云つて遣らあ。細工は流々《りう/\》、仕上げを御覽《ごらう》じろだ。
權三 おや、おや、手前は急に強くなつたぜ。變な野郎だな。
六郎 だが、まあ、強くなつた方は結構だ。その勢ひで皆んな縛られてくれ。
おかん (かんがへる。)縛られて行つて、すぐに歸して下さるでせうかねえ。
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